2008年
05月
13日
(火)
23:15 |
編集
「入るよ」
指導室の古びてきたドアをノックして、ヴィルナードは室内に足を踏み入れる
。着替えている最中のルノは、ビニールを開けて制服のシャツを出していた。
備えつけのパイプ椅子にどかっと腰を下ろすと、ヴィルナードは疑問に思った
ことをルノにぶつけてみた。
「あの人に何かされたの?」
何気ない質問だったが、ルノは動きを止める程の様子を見せる。
「あんたの反応、おかしかったしさ」
見逃せる位の小さい動きではなかった。ヴィルナードはそれに関しては鈍感で
はないのだ。人の気持ちをすぐに汲み取る事ができた。
「別に」
「嘘。あんた正直に反応してたじゃん」
「言いたくないのは無理に聞かないんじゃなかったのか?」
「変だなって思ったのを聞いてみただけ」
ルノは困惑を隠せない様子を見せる。
「嫌なんだよ」
そう取り繕いながら、通常の制服に着替えると先程着ていた制服のシャツを畳
む。
ただ嫌いだからと、そこまで過剰に反応するものなのだろうかと疑問に思った
。詳しく聞くつもりはないけれど、どうもひっかかってしまう。
「そっか」
ヴィルナードは観念するかのように言うと、椅子から立ち上がった。篭ってい
るような空気が暑苦しく感じて、窓をガラッと開ける。青臭い風の匂いが室内に
入ってくる。
軽く伸びながら窓の外を眺めるヴィルナードの横に、ルノは何も言わずに立つ
。
男くささがあまり見受けられない中性的なルノを見ていると、妙に変な気持ち
になってしまいかねない。
「まさかさ」
「?」
「…いや、いいわ。何でもね」
それを聞いてどうするのかと思った。
変な事を質問しても、彼が傷つくかもしれない。興味本位で聞くような質問は
したくなかった。
「風気持ちいいな」
話題を反らすと、ルノはどこか安心したように「ああ」とだけ返事をした。
未だに理解しがたい能力を持つ者は、星の雨前後に誕生した子供達が割合を占
めるが、稀に違う年齢層の者も含まれていた。
身体に影響を受けやすい、当時小さな子供だった者。ルノの従兄弟であり、保
護者役であるナギル=ラクロ=セラトもその種類の能力を持っていた。
賢い彼は、何の落ち度も無い子供を装い、能力者として親類から忌み嫌われる
事なく今まで生きてきた。哀れな従兄弟を見てきたから、ある日突然与えられた
力を隠していた。
力を持ったことを何の疑問も持たずに生まれた子供は、訳も分からないまま母
から嫌われ、親類からも疎まれ、厄介者扱いをされた揚句に、手のかからない学
校に放り込まれた。
憎まれるために生まれた訳ではないのに、存在するだけで邪魔者扱いされる哀
れな従兄弟。いつからか心を閉ざして、無邪気だったはずの人格も消え失せてい
た。彼が誰かに邪険にされるたびに、自分の方が彼よりも立場が優位なのだと優
越感に浸った事もあった。
指導室の古びてきたドアをノックして、ヴィルナードは室内に足を踏み入れる
。着替えている最中のルノは、ビニールを開けて制服のシャツを出していた。
備えつけのパイプ椅子にどかっと腰を下ろすと、ヴィルナードは疑問に思った
ことをルノにぶつけてみた。
「あの人に何かされたの?」
何気ない質問だったが、ルノは動きを止める程の様子を見せる。
「あんたの反応、おかしかったしさ」
見逃せる位の小さい動きではなかった。ヴィルナードはそれに関しては鈍感で
はないのだ。人の気持ちをすぐに汲み取る事ができた。
「別に」
「嘘。あんた正直に反応してたじゃん」
「言いたくないのは無理に聞かないんじゃなかったのか?」
「変だなって思ったのを聞いてみただけ」
ルノは困惑を隠せない様子を見せる。
「嫌なんだよ」
そう取り繕いながら、通常の制服に着替えると先程着ていた制服のシャツを畳
む。
ただ嫌いだからと、そこまで過剰に反応するものなのだろうかと疑問に思った
。詳しく聞くつもりはないけれど、どうもひっかかってしまう。
「そっか」
ヴィルナードは観念するかのように言うと、椅子から立ち上がった。篭ってい
るような空気が暑苦しく感じて、窓をガラッと開ける。青臭い風の匂いが室内に
入ってくる。
軽く伸びながら窓の外を眺めるヴィルナードの横に、ルノは何も言わずに立つ
。
男くささがあまり見受けられない中性的なルノを見ていると、妙に変な気持ち
になってしまいかねない。
「まさかさ」
「?」
「…いや、いいわ。何でもね」
それを聞いてどうするのかと思った。
変な事を質問しても、彼が傷つくかもしれない。興味本位で聞くような質問は
したくなかった。
「風気持ちいいな」
話題を反らすと、ルノはどこか安心したように「ああ」とだけ返事をした。
未だに理解しがたい能力を持つ者は、星の雨前後に誕生した子供達が割合を占
めるが、稀に違う年齢層の者も含まれていた。
身体に影響を受けやすい、当時小さな子供だった者。ルノの従兄弟であり、保
護者役であるナギル=ラクロ=セラトもその種類の能力を持っていた。
賢い彼は、何の落ち度も無い子供を装い、能力者として親類から忌み嫌われる
事なく今まで生きてきた。哀れな従兄弟を見てきたから、ある日突然与えられた
力を隠していた。
力を持ったことを何の疑問も持たずに生まれた子供は、訳も分からないまま母
から嫌われ、親類からも疎まれ、厄介者扱いをされた揚句に、手のかからない学
校に放り込まれた。
憎まれるために生まれた訳ではないのに、存在するだけで邪魔者扱いされる哀
れな従兄弟。いつからか心を閉ざして、無邪気だったはずの人格も消え失せてい
た。彼が誰かに邪険にされるたびに、自分の方が彼よりも立場が優位なのだと優
越感に浸った事もあった。
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