前書いてたものの書き直し。ただ垂れ流すだけのどうでもいいような小説部屋。なんとも言いがたい内容を作ってます。
COmayo-29
Starrain:10
2008年 05月 13日 (火) 23:15 | 編集
「入るよ」
 指導室の古びてきたドアをノックして、ヴィルナードは室内に足を踏み入れる
。着替えている最中のルノは、ビニールを開けて制服のシャツを出していた。
 備えつけのパイプ椅子にどかっと腰を下ろすと、ヴィルナードは疑問に思った
ことをルノにぶつけてみた。
「あの人に何かされたの?」
 何気ない質問だったが、ルノは動きを止める程の様子を見せる。
「あんたの反応、おかしかったしさ」
 見逃せる位の小さい動きではなかった。ヴィルナードはそれに関しては鈍感で
はないのだ。人の気持ちをすぐに汲み取る事ができた。
「別に」
「嘘。あんた正直に反応してたじゃん」
「言いたくないのは無理に聞かないんじゃなかったのか?」
「変だなって思ったのを聞いてみただけ」
 ルノは困惑を隠せない様子を見せる。
「嫌なんだよ」
 そう取り繕いながら、通常の制服に着替えると先程着ていた制服のシャツを畳
む。
 ただ嫌いだからと、そこまで過剰に反応するものなのだろうかと疑問に思った
。詳しく聞くつもりはないけれど、どうもひっかかってしまう。
「そっか」
 ヴィルナードは観念するかのように言うと、椅子から立ち上がった。篭ってい
るような空気が暑苦しく感じて、窓をガラッと開ける。青臭い風の匂いが室内に
入ってくる。
 軽く伸びながら窓の外を眺めるヴィルナードの横に、ルノは何も言わずに立つ

 男くささがあまり見受けられない中性的なルノを見ていると、妙に変な気持ち
になってしまいかねない。
「まさかさ」
「?」
「…いや、いいわ。何でもね」
 それを聞いてどうするのかと思った。
 変な事を質問しても、彼が傷つくかもしれない。興味本位で聞くような質問は
したくなかった。
「風気持ちいいな」
 話題を反らすと、ルノはどこか安心したように「ああ」とだけ返事をした。

 未だに理解しがたい能力を持つ者は、星の雨前後に誕生した子供達が割合を占
めるが、稀に違う年齢層の者も含まれていた。
 身体に影響を受けやすい、当時小さな子供だった者。ルノの従兄弟であり、保
護者役であるナギル=ラクロ=セラトもその種類の能力を持っていた。
 賢い彼は、何の落ち度も無い子供を装い、能力者として親類から忌み嫌われる
事なく今まで生きてきた。哀れな従兄弟を見てきたから、ある日突然与えられた
力を隠していた。
 力を持ったことを何の疑問も持たずに生まれた子供は、訳も分からないまま母
から嫌われ、親類からも疎まれ、厄介者扱いをされた揚句に、手のかからない学
校に放り込まれた。
 憎まれるために生まれた訳ではないのに、存在するだけで邪魔者扱いされる哀
れな従兄弟。いつからか心を閉ざして、無邪気だったはずの人格も消え失せてい
た。彼が誰かに邪険にされるたびに、自分の方が彼よりも立場が優位なのだと優
越感に浸った事もあった。
Starrain:09
2008年 05月 13日 (火) 23:13 | 編集
 普通に授業が終わり、ルノは通常の制服を受け取る為に職員室へ向かう。今ま
で隔離されたような場所に居た為に職員室の位置がいまいち分からず、ヴィルナ
ード同伴で案内された。
 研究室の特殊な制服を見ると、他の生徒はルノを敬遠してしまうために通常の
制服を着用するようにと言われたのだった。
 どちらかというと小柄で華奢な体型のルノ。破壊の力など持っているようには
到底思えなかった。
「お、来たか」
 ルノの姿を確認するなり担当教師は、机からビニールに入った数着の制服を出
して彼に手渡す。
「お前は付き添いか?」
「そうっす」
「ちゃんと面倒見てくれてるな」
「面倒じゃないから余裕だよ」
 サイズはちゃんと合ってるか確認しろよとルノに言い聞かせると、着替えるな
ら指導室使えと鍵をヴィルナードに手渡す。
 ヴィルナードはルノに「行こっか」と、にっこりと微笑んだ。

 指導室に行く途中、ルノはふと歩く足を止める。ヴィルナードは彼の視線の先
にあるものを見た。
 昨日会った、黒いスーツ姿のルノの保護者がそこに居た。
 二十代後半位だろうか、改めて見ると保護者にしては若すぎるが、自分達より
は遥かに大人に見える。
 男はこちらの姿を確認すると、「ああ」と自分から声をかけてきた。ルノの表
情は若干曇ったが、ヴィルナードがそれに気付く事はなかった。
「ルノと仲良くしてくれているみたいで安心しました」
「いえ…同じクラスだし大丈夫です」
 そうですかと冷静そうな外見に似合わない優しげな顔を向けると、彼はルノに
目をやった。
「当分の支援金を支払いに来たんだ」
「………」
「仲良くしてくれる人でよかったな、ルノ」
 男がルノの頬に手を当ててゆっくり撫でると、反射的に彼は男の手から逃れた
。異常ともいえるような反応を、ヴィルナードは見てしまう。
 嫌いなのは分かるが、すぐに体が反応する程の過剰な嫌がり方だった。
「おやおや…嫌われたものだな」
 ルノは男から目を逸らし、床に視線を落とす。世話をしてくれているはずの相
手を嫌うとは、どういう訳なのかとヴィルナードは疑問に思ってしまった。
「まあいい。ルノ、後でゆっくり話をしよう」
 落ち着いた声でルノに言い、男はヴィルナードに一礼をして一般用の昇降口へ
立ち去っていく。大人の振る舞いだなあと呑気に考えるヴィルナード。
 ルノは持っていた制服を抱きしめ、縮こまるように身を固くしていた。
「…ルノ?」
 様子がおかしいことに、今頃気付いたヴィルナードは、ルノの顔を覗き込む。
どう見ても、あの保護者を恐れているような反応だ。
「え」
 しばらくすると、ルノはヴィルナードの問いかけに気付いたらしく、我に返っ
て茶色い瞳を彼に向ける。平静を装おうとするが、かえって不自然に見えてしま
うのをルノは分かっているのだろうか。
 思い出したみたいに彼は制服を着替えてくる、とヴィルナードから鍵を受け取
り、急いで指導室へ足を進めた。
Starrain:08
2008年 05月 10日 (土) 01:22 | 編集
 人気のなさそうな所を探して、ルノは安心できる場所に一人座り込む。人が多
い所は苦手だと改めて実感した。研究室は少人数だったから、まだ気が楽だった

 似たような能力を持つ者が居たからまだよかった。実際馴れ合う事はなかった
が、同じ境遇に立たされているという妙な連帯感があったのだ。今はそれがなく
、下手に力を使うと奇人扱いをされそうで、いたたまれない。
 最大のコンプレックスを指摘されているみたいで、その場所に居てはいけない
ような気にさせられてしまう。
 この場所から逃げたいと気弱なことまで考えてしまう自分。居場所がないので
はないかと、ネガティブな事を考えてしまう。例えここから逃げたとしても、帰
る場所すら見つからない。絶対にあの男のもとには行きたくない。
 膝を抱えてぼんやりとしていると、少女のぶっきらぼうな声が上から降ってき
た。
「あ、居た居た」
 非常階段を降り、手には袋を持つ彼女は、ルノの目の前までやってくるとその
袋を彼の前に突き出した。
「ねね、皮剥いてくんない?」
「は?」
「私、栗好きなんだけどさ。皮剥くのが嫌いなんだよね」
 左側にどかっと腰をかけ、少女はルノに袋を持たせた。「毎回送られてくるの
」と1つ取り出す。
「でもなかなか皮向けないからさ」
「………」
「あんた、中身きれいにしたまま皮壊すのってできる?」
「出来るけど…」
 言われた通りにルノは手の平の栗に軽く力を集中させると、まるで脱皮するか
のように栗は実だけの姿を見せた。
 少女は嬉しそうに歓声を上げる。
「凄っ!嬉しい〜」
 その栗を一口で頬張ると、「あんたも食っていいよ」と微笑んだ。
 呆気にとられるルノ。
「気にすることないよ」
 食べながら、彼女は呟く。
「周りを気にしてるみたいだからさ。人がいる分色んな奴居るから、あのクラス

「………」
「食っていいって。遠慮しなくていいよ」
 私全部食っちゃうじゃないと皮が剥かれた栗をひたすらルノから取って言う。
「私はリコ。よろしくね」
「…あんたも、普通に力あるんだよな」
「んー、まあ、そんなにたいしたもんじゃないけどね。怪我とか治す程度のもん
だから、あれば便利かなって思う位」
 リコの後を追ってきたヴィルナードは、ようやく見つけたあと言わんばかりに
ルノの右隣に座り込む。
「なあんだ、来たんだ」
「あいつらビービー文句言ってたわ」
「言わせといたらあ」
 うるさいクラスメートよりも栗が大事らしく、暴言を吐いても聞いても気にな
らないようだ。
「よく食うな」
「皮剥いてくれるからさ。すぐに食べる事できて嬉しい」
 自分の能力に嫌気がさしているルノに対しての彼女の優しさを感じた。ヴィル
ナードは剥かれた栗を一つ口に含む。
「すぐ食えるっていいな」
「いっつも苦戦してるもんね」
 もぐもぐと普通に口に入れていくリコに、ヴィルナードはふと疑問に思ったこ
とを問う。自分が今感じる事をそのまま。
「なあ」
「ん?」
「喉…渇かね?」
 リコは飲み物無しで連続で栗を食べ続けていたのだった。
Starrain:07
2008年 05月 10日 (土) 01:21 | 編集
「それとも、引いてほしいの?」
「そこまで言ってないけど…」
 予想外の返事が返ってきたので、ルノはどう言ったらいいのか分からない。
「あんたのその力とさ。俺は真逆みたいだから、別に怖がるとか必要ないよ。カ
バーすりゃいいだけだしな」
 ヴィルナードは共有する小さめの冷蔵庫から缶ジュースを2本取ると、ルノに
放った。普通の扱いをしてくれる人間は今までに居なかったためか、驚きを隠せ
ないようだった。
 家に居てもこの学校に来ても、腫れ物に触るような扱いしかされなかったのだ
。例え相手が気付かせまいとしているようでも、やはりそう感じてしまう。
「それに、力使うのが嫌なんだろ」
「……」
「ならいいじゃん」
 子供のように無邪気な笑みをしながら、ヴィルナードはルノに言った。その笑
顔を見て、ルノは卑屈になっていた自分が恥ずかしくなった。彼から目を反らし
、受け取った缶ジュースを開けて口にする。
 …甘酸っぱいオレンジの味がした。

 なかなか教師達が卒業を許してくれなかった理由。こういう事だったのかと、
ヴィルナードは目の前で飛び散った陶器の破片を見ながらひしひしと感じていた

 特殊技能開発室から来たルノを、クラスメート達はヴィルナードのように寛容
に受け入れる訳ではなかった。破壊という人を傷つけるかもしれない能力を持つ
彼を、怖がる生徒も居るのだ。
「…ナーバスになんなくてもいいよ」
 緊張しているのか、噂に敏感になりすぎているのか。不意に能力が発動してし
まい、陶器の花瓶がいきなり割れてしまったのだ。
「俺、直しておくからさ」
 そう言って、ヴィルナードは割れた破片を繋ぎ合わせていく。教室の隅にある
小さな洗面所で、花瓶に水を入れ、活けてあった花を元通りにさした。
「悪い。…俺、ちょっと教室出る」
 ルノはそう言うと、気まずい表情で教室を後にした。彼の姿が見えなくなると
、教室内の緊張が解れたような雰囲気になる。
「見た?こええよマジで」
「これからあんなのと一緒?勘弁してよ」
 居なくなるのをいい事に、好き放題に言うクラスメートを、ヴィルナードは苦
々しく思った。
 自分の席に座り、どうしたらいいのか思い悩んでいると、目の前に座るリコは
おやつに持ってきたらしい栗を剥きながら呟いた。
「…皮、硬いわ。頼んでくる」
「?」
 おもむろに立ち上がると、彼女は栗が入った袋を持ち出し歩きだす。
「あいつ、化けモンだわ」
 ルノの噂を続ける彼らに、ヴィルナードは何か言ってやろうと口を開いた。
「…痛ってえ!」
「何だこれ…」
 いきなり飛んできたらしい物が足元に転がる。茶色い栗。
「あー、ごめん。化けモン居るって聞いたからさぁ。化けモンと間違って退治し
ようとしたわ」
 意外な反撃に、ヴィルナードは思わず吹き出してしまった。やるじゃんかよと
、リコにGJと言いたくなるのを押さえる。
「くそうぜぇ女!」
「あっそ!」
 憤慨するクラスメートをよそに、リコは飄々と教室を後にする。ヴィルナード
はそんな彼女を追うために、ようやく腰を上げた。
 あいつ、やっぱイイわ。そう思って、彼はにやにやしてしまった。
Starrain:06
2008年 05月 08日 (木) 19:53 | 編集
 いきなり顔を洗うのかよ、とヴィルナードは不思議そうに思った。水の音を聞
きながら、訳の分からない奴だなと腰を下ろしていたベッドに寝転がる。
 洗顔を終えたルノは、無表情で戻ってきた。
「汗でもかいたの?」
「?」
「いきなり顔洗うし」
 ああ、とルノは鞄から中身を出してその疑問に答えた。
「あいつに触られたからな」
 嫌悪が入り混じる声音。
 ヴィルナードはむくっと起き上がると、「へえ…保護者なのに嫌なんだ?」と
続けて聞く。居てくれるだけで安心なのではないかと、孤児である彼は思ってい
た。
「勝手に言ってるだけだ」
「兄弟とかじゃねえの?」
 冗談じゃない…とルノは呟くように言うと、小さめのクローゼットに自分の物
をしまい始める。
「…触られただけで洗うって余程嫌いなんだろな。別に何かされた訳でもなさそ
うなのに」
 深い意味はないつもりで言ったヴィルナードだったが、ルノは微弱な反応をす
る。
「あんたは詮索好きなのか」
「別に。これから付き合うのに仲良くなきゃ意味ないじゃん?言いたくないもん
なら言わなくてもいいし、聞きたいとも思わねえよ。ただ疑問に思っただけ」
「…昔から嫌いなだけだ」
「へえ。異常なまで嫌ってるみたいだな」
「異常な位嫌いだと思えばいい」
 答えるのが面倒なのか、答えたくないのか分からないが、ヴィルナードはそれ
以上追求するのはやめておくことにした。
 最初から揉めるのも嫌だ。
「結構喋る?」
「?」
「あんた最初、無表情で何も言わなかったからさ。無口な奴なのかなと思って」
「聞かれれば答えるだけ」
 空になった鞄をクローゼットの下に入れると、ルノはヴィルナードをようやく
見る。外見からしてうるさそうなタイプだと、彼は思った。好きになれそうにも
ない。
 いらないことを言えば延々と語りそうな口やかましい性格っぽく見えた。外見
で判断はしたくはないが、そう感じる。
「わかんない事があれば何でも言ってくれよな。何か知らないけど、適役俺みた
いだしさ。仲良くしとこ」
「…あんたは俺が怖いとかは感じないのか?向こうから来たのに」
 向こう。異端者の集まりとされる場所を指して、ルノはヴィルナードに問う。
いいイメージが沸かないであろう場所から来た者を、好奇な眼差しで見る生徒が
多数居たことは、短期間であれどその場所に居た彼自身よく感じていた。
 ただでさえこの学校は特別扱いで見られがちで、その中でも異種生徒であった
ルノ。研究室の生徒は、シャツの襟章と袖口の赤いラインで判別されていた。普
通の生徒からは敬遠されがちの外見だ。差別の対象になるのではないかと教師の
間では話し合いが幾度も繰り替えされていたが、感情のコントロールができない
生徒からの対処方法の一環にもなっていた。
「なんで?」
 けろっとしてヴィルナードはルノに逆に問う。
「なんでって…」
 想像もしない返事を受けて、ルノはどう対応するか分からず詰まった。
「まだよく知りもしない相手が怖いなんて変じゃね?」
 当たり前のように答えるヴィルナード。普通の生徒のイメージで、てっきり敬
遠していくのかと思っていたルノは呆気にとられてしまう。
Starrain:05
2008年 05月 06日 (火) 20:24 | 編集
「明日から一般の教室に行く事になるから、手間かけるだろうけど馴染めるよう
によろしく頼むよ」
「あいよ」
 気力のない返事をして、ヴィルナードは指導室のドアノブに手をかけた。面倒
だなと思いつつも、何を考えているのかさっぱり分からないルノに多少興味を持
った。

 一般校舎から少し離れた場所に、生徒が生活している寮があった。国の機関か
ら研究奨励金が学校へ毎月送られてくるために、彼らは生活には困らない程度だ
ったが、他の同じ年代の学生にとっては嫌悪の的になっているのも事実である。
 外靴から寮用のスリッパに履きかえて靴箱に靴をしまい、部屋に向かって歩き
だす。所々に授業を終えた制服姿の生徒達が見えたり、遊びに出ようと私服に着
替えた生徒が出ていくのを見た。
 階段を昇り、2階の自室の手前でふと足を止めた。少しガタがきていた木製の
ドアが開いている。荷物がまとまって床に置かれていたので、先程のルノという
少年が来たのだろうと軽く考えていた。
 ヴィルナードがそこへひょっこりと顔を出すと、部屋にはルノではなく見知ら
ぬ男が立っていた。
「……誰?」
 身長の高い、すらっとしたスーツ姿の男は、ヴィルナードに気付いてふと目を
向ける。ああ、と声を出して丁寧にどうもと挨拶をしてきた。
「ルノの保護者役をしている者です」
「あぁ…そっか」
「あの子はまだ来てないようですね」
 保護者役の割にはまだ年若いなとヴィルナードは思った。兄弟か何かだろうな
と勝手に解釈する。荷物を届けに来たようだった。
「さっき指導室で見たから、そのうち来るんじゃないすか」
「そうですか」
 一人で快適に過ごすのも最後かと少しがっかりしたものの、相部屋にいつかな
るだろうという覚悟もしていたからそんなに名残惜しい気持ちもしなかった。
 意気投合できるかどうか不安だったが。
「あの」
「はい?」
「どういう性格の子なんすか」
 人形のように感情を出さなかったルノ。やっていけるのかどうか、陽気な性格
のヴィルナードには不安だった。
「お会いした通りの子ですよ」
「会った通りって…終始無表情だったんすけど…あの通りって事?」
 マジかよ…とヴィルナードは落胆を隠せなかった。どちらかというと苦手なタ
イプである。
「根はいい子ですよ。言う事はちゃんと聞きますしね」
 彼の口調は妙に意味合いを込めた言葉だったが、ヴィルナードはそこまで深く
は考えずに聞いていた。部屋の外からこちらに近づいてくる足音が聞こえ、やが
て遠慮がちに止まった。
 男は「来たようですね」と部屋の外に出て、先程のルノという少年を中に入れ
る。
 荷物も部屋の中に入れると、男はルノの肩に手を置いて、子供に言い聞かせる
ように挨拶しないといけないよと一言添えた。
「…よろしく」
 初めて聞いた彼の第一声。ヴィルナードは軽く挨拶を返すと、どうしたらいい
か分からないままベッドに腰を下ろした。
「じゃあ帰るから、あとはいろいろ聞いて仲良くしなさい」
 ルノの頬を撫で、ヴィルナードによろしくお願いしますと一言告げると、男は
部屋を出ていってしまった。遠ざかる足音を聞き終える前に、ルノはヴィルナー
ドに第二声を放つ。
「洗面所はどこ」
「へ?…あぁ、そっち」
「そうか」
 言うなり、彼はタオルと洗顔剤を鞄から出して示された場所へ向かった。
Starrain:04
2008年 05月 06日 (火) 20:22 | 編集
「特殊技能開発室から来たルノという子だ。人に慣れない所もあるかもしれない
けど、お前なら何とかやっていけるだろ」
 特殊技能開発室。ヴィルナードはその言葉に反応する。この学校での、特に異
質な能力を持つ生徒が出入りする場所。この少年も、そうだったらしい。
 開発室の生徒はある種の特別な生徒である為に、通常の生徒からは殊更に異端
視されていた。
「…いいんだけどさ、何で俺なの?」
 ふと湧いた疑問を投げ付ける。
「お前しかいないからな」
「へ?」
「彼の能力をカバーできるのはお前しかいないんだよ」
 ヴィルナードの持つ能力は『修復』。
 では相手の少年の持つ能力は何なのか、まだ分からないヴィルナードは訝しげ
な目を教師に向けた。
「見た方が早いだろうな」
 教師は胸ポケットに挿していたボールペンを、少年…ルノの前に置いた。
「じゃあ、ルノ。彼に見せてくれないか」
 ルノと呼ばれた少年は、無関心な目をしたまま、ボールペンを手に乗せる。表
情を変える事もなく、彼は能力を発動させる。
 パキン!と乾いた音と共に、ボールペンが破裂し、掌に散らばった。インクが
ぽたぽたと零れる。ヴィルナードは目を見開き、ルノの顔を見た。何の変化もな
い。無感動で、今何を考えているのかも読み取れなかった。
「…これでわかっただろう」
 教師は促すようにヴィルナードに壊れたボールペンの破片の一部を手渡した。
「お互いを補助しあえる能力同士、一緒に行動した方がいいと思ってな」
 ヴィルナードは掌に置かれた破片に対し、自身の持つ能力を発動させると、パ
ズルのピースを繋ぎ合わせるように復元を始めた。破裂する前の状態に戻るボー
ルペン。
 優秀なもんだ、と教師はそのボールペンでメモ用紙に試し書きをした後に褒め
る。
「お前の能力が『修復』ならルノは逆の『破壊』なんだよ」
 小柄なルノの持つ、危険な能力。感情によって左右されてしまうかもしれない
特殊能力の持ち主は、通常なら隔離されなければならないが、カバーできる能力
を持つ人間が居れば話は別だった。
 ヴィルナードは溜息混じりに不意に思った事を教師にぶつける。
「…て事はあれか、ぶっこわしたら後始末は俺がやらなきゃなんねえって事?」
 押し付けられたような気がして、不満げな口調になってしまった。便利屋扱い
されるのは御免なのだ。
「口が悪い言い方だな」
「俺が何でもはいはいって安請け合いすると思う?」
「彼は感情にまかせて力を使うようなタイプではないから安心しろ。コントロー
ルくらい訓練で十分出来る子だし、何より力を使う事を嫌うからね」
 へえ…とヴィルナードはうまく丸め込まれたような気持ちになりながら、渋々
と承諾した。
Starrain:03
2008年 05月 05日 (月) 13:56 | 編集
 ぱっと見て、不釣り合いな2人だが、意外な事に妙に気が合った。付き合って
いるのではないかと噂される程だが、そうではないらしく、聞く者が居たとして
もお互いに「気持ち悪い事を言うな」という返事が必ず返ってきた。
「ひでーの、いっつも俺こいつにいじめられるんだぜ」
「うっせ、近寄るな香水臭い」
「擦りつけてやるよっ」
 いつものようにべったりとする2人を、またかと苦笑混じりに見るクラスメー
ト。
「お前ら、くっつくんなら休み時間にしてくれないか」
「だったら席離してくれませんか。欝陶しくてしょうがない」
 ヴィルナードにくっつかれて本気で迷惑している顔を教師に向ける。慣れてい
るので、彼が抱き着いてこようがどうしようが何とも思わないようだ。
「そうは言っても…恋人同士なんだろう」
「はあ?気色悪い事言わないで下さい」
「俺とリコはそんなんじゃねーよ?」
 あまりにもくっつくものだから信用していいものなのか第三者にはさっぱり分
からない。
「お前らの関係はさっぱり分からないよ」
 理解ができずに微妙な表情をする教師。
 終業の鐘が鳴り響き、気がついたように教師は「時間食ったけど今日はここま
で」と教卓に戻った。
 一日の終わりを告げる鐘が鳴り終わると、先程の教師はヴィルナードに声をか
ける。ちょっと職員室まで来い、と。
「うぇえええ〜??」
 あからさまに嫌そうな声を上げた。
「怒るためじゃない。用事があるだけだ」
「めんどくせぇえええ」
 文句を言いながらも大人しく教師についていくあたり、まだ彼は真面目だった


 寮に戻る生徒や、部活動をしに行く生徒に紛れながらヴィルナードは職員室の
前にやってきた。職員室に入るのかと思いきや、「こっちに来い」と案内された
のは職員室から少し離れた特別指導室。
 それを見たと同時に、「結局説教じゃねえかよ」と落胆し肩を落とした。
「注意するために呼んだんじゃないから安心しろ。お前に任せたい生徒が居るん
だ」
「はあ?」
 中に勧められて室内に足を踏み入れると、目の前に一人の少年がパイプ椅子に
座っていた。一度だけ部屋の来客に目をやると、すぐに興味を失ったかのように
目を逸らして他の場所に目を向ける。
 綺麗な顔立ちをしている少年だった。
「…あの、意味分からないんすけど」
 任せたいとはどういう意味なのか。
「今日からお前と相部屋になる子だ」
「ああ、そういう事かあ」
 若干重く受け止めていたヴィルナードはようやく合点がいったらしく安心した
声を上げた。
Starrain:02
2008年 05月 03日 (土) 14:02 | 編集
 同じ境遇に立たされた彼らは、寮つきの学舎で同じように勉学や能力の制限、
開発を学んでいる。人の役に立てるように、その能力の利点を引き伸ばしていく
事がこの学院の最大の目的とも言えた。
 普通の学校と変わりはない。ただ、そこに居る生徒達は一風変わった力を持っ
ているだけだった。
 緩やかな風に深緑の葉が揺れる初夏。
 退屈そうに研究員生の一人の男が教室の窓を開け、欠伸を繰り返す。
「ああーねみぃいいい」
 少年というには大人過ぎ、青年というにはまだ子供っぽいあどけなさがある彼
は憂鬱そうな声を上げる。
「あぁああああっ、いでででで」
「授業中だと言ってんのがわからんのか」
 いきなり耳を引っ張られ、激痛に顔を歪める。数度に渡る注意を聞き逃す耳も
とに、担当教員は怒りもそこそこにわかりやすい声で注意した。
「年長なのに何でお前はいっつもそうなんだろうなあ、ん?ヴィルナード」
「年長でも眠いもんは眠いんす」
「一番見本になるべきなのにこの飾りまみれの耳もどうにかならないのか」
「どうにもできません」
 年齢制限をあまり設けないこの学校は、様々な年齢の生徒が居た。とはいえ、
星の雨以降に生まれた子供達がほとんどである。このヴィルナードは、星の雨の
時期にまだ幼年だったが、外出先で星の雨の光を浴びてしまい、それまで普通だ
った生活が一変してしまった。
 星の雨で両親を亡くし、光の影響で変わった力が引き出され、孤児になったま
ま学院に引き取られた。
 彼に備わった能力…修復能力。
 壊れてしまった物を、きれいに直す事ができる力。十分に社会に適応できる力
だが、本人が卒業でもいいだろうと嘆願しても、学院側はなかなかOKサインを出
さなかった。理由は何なのか、未だに本人は分からないままだ。
「23歳なのにだらしない格好して…いいかげん落ち着いたらどうなんだ」
「やだよう」
 拗ねたように首をふり、ヴィルナードは口答えを繰り返す。大人にとってはだ
らしなく見える格好でも彼にとってはそうではないらしく、いくら直せと言われ
てもこれだけは譲れなかった。
 かといって、不潔な印象を与えるものではない。程よく制服を着こなしている
し、アクセサリーはしているものの目にうるさい程でもない。大人にとってはだ
らしない印象を与えてしまうのかもしれないが。
「こいつに何言っても無駄だよ先生。聞く耳持たないでゆらゆらごまかすんだか
ら」
 ヴィルナードの前の席に座る少女が呆れるように声をかける。
「ごまかすのが得意だもん」
「分かってんじゃんか〜」
「懐くな、暑苦しい」
 黒い長髪の和風な印象を与える少女は、そんな外見を無視するようにつんとし
て突き放した。
Starrain:01
2008年 05月 02日 (金) 16:01 | 編集
 望みもしなかった子供をその腹に抱えた若い女は、けだるい面持ちで窓の外を
眺める。産前の憂鬱な気分で見る外の景色は、例え目の前にある夕焼けでさえも
色褪せて見えた。
 美しいとか楽しいとか、そのような感情は既になくなりかけている。好きとか
嫌いという気持ちも分からないまま見合いをさせられ、相手を好きになれるのか
分からないまま流されるように結婚して、愛情など微塵もない状態で身篭ってし
まった。
 良家の我儘なお嬢様だった女。
 結婚してからは我儘も言えなくなった。嫁である事を要求され、妻という立場
を押し付けられ、そして今度は母という現実を見せつけられている。
 全て投げてしまえたらどんなに楽か。
 一体何度目なのか分からない溜息をつき、一度興味を失った窓の外に再び目を
やる。
「……?」
 夕方のオレンジに染まる上空に、異様なものを確認した女は、身を乗り出して
目を凝らす。
 …光り輝く玉があった。一つだけではない。点々と。こちらに向かってくるよ
うに、それはだんだん大きくなってくる。
「な…何…?」
 大きくなるにつれ、漠然と不安と恐怖感が襲いかかってきた。速報があるかも
しれないとテレビのリモコンに手を延ばした。
 途端、周囲が光り、凄まじい音が響き渡る。地震のように地面が激しく揺れ、
大気も震え、つんざくような酷い音がした。
 立っていられない揺れがあたりを襲い、家中の家具も揺らされ、倒れてしまう
。例えようのない音があちこちで聞こえた。
 自然と自身の腹部を守るようにしゃがみ込んでいた女は、落ち着いた頃合いを
見計らって窓の外を見る。その目に飛び込んできた物を見て、彼女は息を飲んだ
。異様な風景があたりを埋め尽くす。
「…何…これ…」
 今まで無かった物が、そこにはあった。

 星の雨と呼ばれる大量の隕石が地上に降り注いでから約20年後。隕石の影響
からか、生態系に変化が見られるようになった。確実な原因は不明のまま、人や
動物、植物までもが否応なしに変化してしまう。
 星の雨から放射された光が原因という説もあるが、未だに解明されずに今に至
る。
 動物や植物は外見の変化が見られ、見た事がない生物が各地で発見され、調査
のために現在も見つけ次第保護されている。
 人の場合は外見の変化は見られないが、内面の能力…特に星の雨以降に産まれ
た人間は、眠っていた個人の能力がずば抜けて引き出されていた。良い意味でも
悪い意味でも利用されかねない能力を持つ羽目になった彼らは、常日頃その能力
をコントロールして生活しなければならなかった。
 制限に塗れた生活を強いられた彼らの、唯一の避難場所と言われる施設がここ
、アルヴィオラ高等研究学院。数多くの能力者を育成している場所だった。異端
者の集まりだと、際立った能力を持たない者は陰口を叩いたりもする。
 当たり前のように制限のない生活を送る事ができる彼らが、研究員生にとって
はどんなに羨ましい事なのか、陰口を叩く本人達は知らないのだ。
さいしょ
2008年 05月 02日 (金) 14:15 | 編集
テストも兼ねて。
ただ思いついたものを延々と不定期に書いていくだけのお部屋です。
前作ってたものを書き直して最初からだらだら作っていきます^^
変な文章があるかと思いますが気にしないでください。

自分で書いててもほんとわかりません。
なのでそのまま見逃してください^^

内容は前書いてた天災によって変な能力がついてしまった2人の話。
スローペースでやっていきます。
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