前書いてたものの書き直し。ただ垂れ流すだけのどうでもいいような小説部屋。なんとも言いがたい内容を作ってます。
COmayo-29
Starrain:21
2008年 08月 03日 (日) 15:46 | 編集
「気にする事ねえよ」
「………」
 ヴィルナードがやけに寛容な事を言うものだから、思わずルノは泣きそうにな
る。絶対引くと思っていたのに、すんなりと聞き入れ、気にする事はないとまで
言う。
 自分の持つ能力と同様、従兄弟との関係がコンプレックスだった。言えない秘
密を持つのが苦痛で仕方なかったのだ。
「ほら、何ていうの?一人で悩み抱えるよりは楽になったろ?」
「それは…」
 ならいいんじゃね?とヴィルナードはいつもの笑みを漏らす。ルノは照れ臭さ
といじけたような、何とも言い難い顔をした。
「好きでそうしていた訳じゃないしな。それで引くようじゃおかしいって」
 そのような趣味は持ち合わせていないのだが、あの場面を見た時に、何故か胸
が高鳴ってしまった事は、本人には言えなかった。
 ルノは意外な展開に対処できない為か、「風呂に入ってくる」とだけ言い残す
と逃げるように浴室に消える。
 嬉しいのか悲しいのか、よく分からない感情に襲われたルノが、シャワー室で
湯を浴びながら柄にもなくぐすぐす泣いていた事は、ヴィルナードには知るはず
もなかった。

 寮の消灯時間は23時。寮に住んでいる生徒達は時間厳守で嫌でも電灯を消さ
なければならない。巡回をする程厳しい為に、深夜に隠れての外出も難しい。
 出入り口のドアは部屋の明かりを判別するためのガラスの小さな窓があった。
巡回係はそれで消灯されているかを見ていた。
 それを避けるためにずる賢い寮生は、小さめの電灯を購入して、部屋に常備さ
れているベッドとベッドの間にその電灯を立てて、囲むように座ると、明かりが
漏れないように掛け布団を自分達に被せてやり過ごすという姑息な手段を編み出
したりしていた。
 ヴィルナードもそのやり方で、こっそりと夜中に酒類を飲んで眠れない夜を過
ごしていた。今まで一人酒をしていたが、ルノがやってきたために話し相手がで
きて有り難かった。
「やっぱ誰か居たら飲むのも楽しいね」
 上機嫌でヴィルナードはビールを飲み干した。飲むペースがいつもより早いの
は、誰か居る事の嬉しさのためだった。
 ルノは浴びるように飲むヴィルナードを見ながら、烏龍茶をすする。酒類はま
だ飲めなかった。
「一人だったからさ、部屋の中」
「気楽じゃないか」
「気楽だけどさ」
 数本目かの缶ビールをすっかり空けて、はあ、と溜息をつく。割と酒は強い方
だが、ペースが早過ぎたせいか酔いが回る。
「寂しい時もあるよ」
 ルノは缶を寄せ、片付けやすいようにまとめる。黙ってそれを見ていたヴィル
ナードは、ふと夕方の事を思い出した。
 馬鹿な考えが頭を過ぎる。正常な思考ならありえないと思っていたくせに、酔
った勢いで不意に言葉が出た。
「なあ」
「ん」
「キスでもするか」
 意味が分からない。
 ルノは「はあ?」と返した。
「俺があいつにやられて、嫌だって言ってたの知ってるじゃないか」
「知ってる」
「知ってて無茶言うなよ」
 ヴィルナードはぼんやりしながらも、確かに無茶言ってるなと頷いた。そこだ
けは正常な思考が残っていた。
Starrain:20
2008年 08月 03日 (日) 15:44 | 編集
 ルノを引っ張るヴィルナードに、男は嘲笑うように声をかける。くれぐれもル
ノに変な気を起こさないようにと。ヴィルナードはあんたと一緒にするなと一蹴
した。
 寮の部屋まで、2人は無言だった。
 部屋に入ると、ヴィルナードは鞄を放りルノをベッドに座らせる。
 どんな話をしたらいいのか、さっぱりわからなかった。
 ようやく口を開いたのは、意外にもルノの方からだった。
「意味がわかっただろ」
「………」
「ああいう事を平気でするんだよ」
「ずっとなの…?」
 異常とも言える2人の関係に、ヴィルナードは動揺しながら問う。
「13か14歳位からかな。…いつからとか、もう忘れた」
「でも、本当の親って居るんだろ。バレたりしなかったのか?」
「居ても居なくても同じなんだよ。顔も見てないし、世話にもなってない」
 そっか…とヴィルナードは肩を落とす。 両親が全く居ない分、こっちはまだ
気楽なのだろうかとふと思った。ルノの方が、かなり複雑な立場のように思える

 面倒を見る代わりに…と言っていた。しかしルノが合意の上で関係を持ってい
るようには見えず、一方的に相手が強制しているみたいだった。あの男の言動が
不意に気になり、頭よりも先に口に出してしまう。
「なあ、まさかとは思うんだけど…交換条件であんな事してた訳?」
 その問い掛けに、ルノの顔は強張る。
 してはいけない質問だったかもしれないとヴィルナードは戸惑った。
「こじつけだ、そんなの」
「………」
「誰が交換条件であんな事…」
「…だよな…」
 この学校に放り込まれ、ようやく呪縛から逃れたと内心喜んでいた。しかし、
結局は相手の掌で転がされていたのだった。どうしようもない悔しさがルノを責
めていた。
 どこに居ようと、あの男からは逃げられる訳ではないのだ。
「あまり俺に関わらない方がいい」
 ルノはヴィルナードに忠告した。これからどうなるのか分からない。無駄に傷
つけたくはないし、自分を庇ったりする事で、ヴィルナードがあの従兄弟から何
をされるのか分からないからだ。
 それに、惨めな自分の姿を見られたくなかった。普通じゃない自分を見せたく
なかった。
「あんなの、見られたくないんだよ」
 弱気な言い方をするルノ。
「何言ってんの」
「………?」
「俺は別に気にしねえよ?関わるなって言われたらますます関わりたくなるしな

 妙に普通に返してくるヴィルナード。
「気にしないって言っても、俺が気にするんだよ」
「じゃあお前も気にしなきゃいいじゃん」
 けろっとする返事に、ルノは返せなくなる。話がまるで通じないように思えた

「だから…」
 どう説明したらいいのか分からず。
 そんなに凹む事がない位に楽天的すぎるヴィルナードには、結局何を言っても
無駄だと言うのを、ルノは全く知らない。
「事情知っちゃったんだから、もう俺に隠すもんなんかねえんじゃねえの」
「引いたかと思ったんだ」
「そりゃ…最初はびっくりしたよ」
 変に照れ臭そうな顔をし、ヴィルナードは言う。あの男に唇を奪われ、される
がままになっているルノを思い出す。
 妙に色気があって、同性なのに可愛いとすら思った。あの男が手放したくない
のも無理は無いかもしれない。
Starrain:19
2008年 08月 03日 (日) 15:43 | 編集
「逃げられたと思ったか?」
 観念したかのようにされるがままになっていたルノは、紅潮する頬を男の前で
見せていた。
 いつも表情を変えないルノの、見た事のない顔だった。壁に背を押さえ、逃げ
られないようにルノを抱きしめて口づけを交わす男。ルノは身じろぎをしながら
呻く。
 首筋を口づけられると、ルノはびくんっと反応して顔を背ける。荒い呼吸をし
て、うっすらと目を反らした方向を見た。
「………っ!」
 ルノと視線がかち合う。ヴィルナードは声も出ず、口を押さえるのに精一杯だ
った。ルノはハッとした顔を見せると、男を突き放す。
 彼の様子に気付いた男は、ルノが見ていた方向に目を向けた。そして、ふっと
笑みを漏らす。
「盗み見るなんて悪趣味だな」
 見られても強気な態度を崩さない男とは逆に、ルノはその場所にへなへなと崩
れていた。
 混乱する気持ちを整理するのがやっとのヴィルナードは、「どういう訳…?」
と聞く。意味がわからなかった。あれだけ嫌がっていたルノが、男とあんな濃密
な行為をしているとは、予想もつかなかった。
「どう言い訳する?ルノ」
「………」
 一番見られたくない人間に見られた事に、ルノはいたたまれない気持ちに陥っ
ていた。いっそのことこのまま消えてしまいたいと思った。
「大事な友達に見られてしまったみたいだね」
 打ちのめされたようなルノの様子を、男は宥める口調で言う。細い腕を引っ張
り、座り込んだ彼を立たせて引き寄せると、男はルノの唇を再び覆った。
「…嫌だっ…」
 激しい抵抗をして、ルノは男から離れる。唇を切られる程の抵抗をされ、彼は
ルノの頬を張った。
「ルノ!…あんた、何するんだよ!?」
 ヴィルナードはルノの側に駆け寄ると、男に向かって怒鳴った。
「代わりに言ってやろうか、ルノ?」
 冷たく見下す口調で男は続ける。
「ルノは俺の玩具なんだよ。昔からずっとね」
「は…?」
 耳を疑う程のありえない言い方だった。
「好きな時に自由にできる便利な玩具。ルノも面倒を見て貰うかわりにこうして
体で支払ってきたんだよ」
「あんた何言ってんの…?本気でそんな事言ってる訳?」
「冗談でこんな事言わないよ」
 冷酷とも言える男の言動を、ルノは座り込んだまま、乾いた気持ちで聞いてい
た。
 最低だ、とヴィルナードは呟くと、弱っているルノの腕を掴んでゆっくり立ち
上がらせる。ルノの表情は、今まで見た事のない表情だった。
 恥ずかしさと、悔しさと悲しさが入り交じった顔。だが、先程の行為を見てい
たせいか、その顔に妙な色気を感じていた。
「帰ろ」
 保護者という男の信じられない裏の顔に、ヴィルナードは怒りを覚える。今ま
でそのような扱いを受けていたルノが、哀れでしょうがなかった。
 嫌いだとあれほど言っていた理由が、ようやく理解できた。昔から酷い扱いを
されれば、どう転がっても好きになれる訳がない。
Starrain:18
2008年 08月 01日 (金) 21:48 | 編集
 リコはヴィルナードの話を聞いて、いきなり頓狂な声を上げた。クラスメート
が授業に勤しんでいる時に大声を上げたものだから、全員彼女の方を見る。
「何をした、リコ」
 怪訝そうな教師の視線を受けながら、リコは「何でもありません」と慌てて取
り繕う。冷や汗をかきながら、彼女は後ろの席のヴィルナードを睨んで、小声で
怒りをぶつけた。
「変な事言うなっつーの!」
「だってマジだもん」
「ありえなくね?」
「俺だってそう思ったよ」
 ルノ本人に言うと複雑な心境になりかねないと思ったヴィルナードは、リコに
昨日の水道管の事と今朝の事を喋っていた。内緒な、と前置きした上で伝えたが
、彼女はかなり驚いて叫んだのだった。
「すげえ裏表激しい。めっちゃサドだよあいつ。マジでやべえの」
「嘘ぉ…」
「嘘だと思っていいけどさ。俺は関わりたくねえわ」
「だってさ。あのオルハだよ?誰にでも人当たりがいい生徒会長だよ??女子に
だって人気ある奴がさ。おかしいって」
 ひたすら否定したがるリコを、ヴィルナードは「なんだよ」と膨れる。
「ショックなのかー?まさかお前好きだったとかか?」
「それはないけどさ」
 意外すぎるんだよと複雑な顔をする。
「もしそうならあんたやルノの前では態度変えるよね」
「…関わらないようにするわ…」
 ぐったりしながら、ヴィルナードは言う。本人はいたくルノを気に入った様子
だったから、あまり近づけたくない相手だと思っていた。

 予感は的中した。こちらが関わりたくないのにも関わらず、相手のほうはやた
らと偶然を装いながら話しかけてきた。
 ううわ、とあからさまに嫌そうな顔を見せてやっても、オルハは全く気にする
様子もなく。
「今度はゆっくり話をしよう」とルノに微笑むが、ルノは拒否をし続けていた。
 新手の変人に苦戦を強いられていたある放課後、ヴィルナードは個別に用事を
申し付けられ、ルノと別行動をとらざるを得なくなってしまった。
 ようやく周りの環境に慣れた頃で、ルノは一人で寮に戻れるから大丈夫だと先
に帰宅していった。不安だったが、そんなに変な事は起こらないだろうと思いつ
つ、さっさと用事を済ませてから寮への道に足を踏み入れる。
 日中は暖かい空気が流れていたが、夕方頃には若干寒さを感じる。人気の無い
石畳を歩いていくと、変な声が耳に入ってきた。普通の声ではなく、異様とも言
える声音だった。
 寮の手前に物置小屋があり、滅多に生徒は出入りはしない。声はそこから聞こ
えてきた。できるだけ物音は立てないように、ヴィルナードはそろそろと近寄る
。バレないようにしておかないと、後で面倒だからだ。
 近寄る毎に、声ははっきりと聞こえてきた。その声は、妙に熱を帯びたような
声音だと気付いた。
「………!」
 悲鳴を上げそうになった。
 口を押さえ、よろめきそうな程力がなくなりそうな足を踏ん張る。
 見た事がある2人が目の前に居た。
 ありえないとショックに打ちのめされ、ヴィルナードは後ずさる。目の前で繰
り広げられた光景に、かなり動揺した。
 ルノの保護者役だと言っていた男が、何故かその場所に居て、濃密な口づけを
相手と交わしている。彼のその相手は、信じられない事にあれほど彼を嫌ってい
たあのルノだった。
 嫌がり抵抗する訳でもなく、ルノはそのまま男にされるがままになっていた。
人形のように、彼に身を預けたまま。
Starrain:17
2008年 08月 01日 (金) 21:47 | 編集
「仕返しをしてくれとか言ったのかと思ったよ」
 あれだけの力があるのにねとくすくすと悪意のない笑みを浮かべるが、やがて
彼は表情を変化させる。
 裏表のない人間だと言われ続けていた人気者の生徒会長の、ある一面を見た。
「俺ああいう子を見るとつい意地悪したくなるんだ。痛がってたあの子の顔を見
るとたまらない気持ちになるね」
「はあ?」
「もっと見たかったけど、邪魔が入っちゃってさ…」
 ヴィルナードは彼の意外過ぎる表情に目を疑い、その言動に呆気に取られた。
人なつっこい笑みではなく、妖しい大人のような顔を見せている。
「また見たくなった」
「何言ってんだよあんた…」
 見た事がない、というかお目にかからないタイプの逸材を見たヴィルナードは
、反応に困っていた。
 …何このドS口調。
 こんな奴だったのかと、関わらない方がよかったかもしれないと今更後悔する

「俺はあんたって名前じゃないよ。さっきから気になってたけどさ…ちゃんとオ
ルハって名前があるんだから、そっちで呼んでくれないかなあ」
「………」
「そのルノって子にも言っておいて」
「いや」
 ヴィルナードは面倒になってきた。時間の無駄だと初めて気付く。まともに会
話しようとしても、相手がこんな調子ならどうしようもないような気がしてきた

 扉を開けながら、ヴィルナードは怠そうに答える。
「はっきり言って、もう関わりたくねえわ。ルノにも近寄るなって言っておく」
 オルハは跳び箱から降り、ヴィルナードに近付く。それを見て、勘弁してくれ
よと思いながらも「何だよ」と口に出した。
「ああいうタイプって絶対変な奴を知らない間にくっつけてくるから気をつけた
方がいいよ」
 同じ位の身長のために、嫌でも顔がすぐ間近に感じた。妖しい笑みを浮かべな
がら、オルハは続ける。
「俺みたいなのとかね」
「…あっそ…」
 …自覚しているのか。
ヴィルナードは逃げるように物置から飛び出す。新種の変人を見てしまったよう
な、損をした気分のまま。
 体育館に出ると、探しに来ていたらしいルノがうろうろしていた。ヴィルナー
ドを見るなり、「何してたんだ」と妙に怒った口調で言う。
「何でもね…」
 見慣れた顔を見たせいか、自分でも分かるような疲弊したような声だった。
「探しに来てくれたのかあ」
「道迷うから…」
「子供みたいだな」
 体育館に響く、先程とは違う和やかな会話を盗み聞きしながら、壇上の隅に出
たオルハは妖しい笑みを浮かべる。
 今度会ったらまた痛めつけてみよう。きっと可愛い声で鳴くに違いないと、危
ない思考を巡りあわせていた。
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